旅田です。今回は大学時代、青春の多くを文藝部に費やした私のライティング術(文章の書き方)をご紹介します。
最近、弊社もメンバーが増えてきたこともあり、持ちまわりでブログ記事を書くようになりました。ただ、いざ何かを書こうとしても、普段から文章を書き慣れていないと、完成させることさえ難しいですよね。
特にデザイナーやクリエイターと呼ばれる方々は、「表現したいことはたくさんあるのに、文章だと上手に表現できない」といったジレンマもあるようです。
そこで、今回は〈文章を書く〉という行為のうち、表現したいことを上手に伝えるための〈心がまえ〉と〈注意事項〉をまとめました。
- 「文章だと、うまく伝わらない」と思い込んでいる方
- 「文章は苦手だから、口頭で説明させてください」と言いがちな方
- つい主観的な文章を書いてしまう方
- 卒業論文に追われている学生の方
上記のいずれかに少しでも当てはまる方は、このまま最後まで読んでいただけると良いでしょう。
〈心がまえ〉篇
大前提①「主張したいことはあるか?」
今回ご紹介するライティング術では、〈主張〉と〈文章〉という2つのキーワードを軸にご説明していきます。
まず、そもそも主張を持っていることが大前提となります。
たとえば、あるデザイナーが自身の制作物のポイントをブログで紹介しようとする場合などは、明確な主張がありますよね。
その逆に、もしも業務の一環で記事を書く必要に迫られているなど、記事を〈書くこと〉が目的になってしまっている方は、一度、頭のスイッチを入れ替えて〈主張したいこと〉を見つける作業から始めましょう!
これは個々の気持ちの問題でもあるので、「主張したいことなんかないから書けないよ」とお考えの方にはやや酷なステップかもしれませんが、ひとつヒントを示すならば、〈自分ならではなもの・こと〉に着目してみるのが良いでしょう。
この広いインターネットの世界には、あなたの記事に感動する人がいるかもしれませんよ。
大前提②「文章は減点方式である」
突然ですが、あなたがピザ屋の宅配ドライバーであるとします。
注文の電話が入ったため、その場で作ったピザを〈最も美味しい状態で配達したい〉あなたは、ピザが冷めないように急いだり、ピザが崩れないように安全運転を心掛けたり、何らかの工夫を施すでしょう。
しかし、残念ながら、最も美味しいピザはお客さんの手元にはあり得ません。〈最も美味しいピザは出来立てに限る〉からです!
出来立てのピザの美味しさを100とすると、それがお客さんの手元に届く頃には、もはや98や95であり、少なくとも100以上にはなりません。
そして、あなたが自身の主張を文章で伝えようとするときも〈全く同じ〉ことが起こるのです。
ここでいうピザは、記事における〈主張〉であり、宅配ドライバーは〈文章〉に当たります。ピザや主張を〈相手に届けたい中身〉とするならば、それを届ける宅配ドライバーや文章は、あくまで〈媒体〉に他なりません。
このように、文章は減点方式なので、自らの主張を100%伝えるために最大限工夫することが、書き手として重要な心がまえとなります。
「〜と思う」は封印せよ
自分で書いている文章に「〜と思う」を付けることはやめましょう。そもそも自分が思っていることを書いているので、改めて「思う」必要はないからです。
ややもすれば揚げ足取りに感じられる些細な指摘かもしれませんが、「〜と思う」には読み手に曖昧な印象を与え、主張の信ぴょう性を疑われかねません。また、「〜と思う」を意識的に「〜だ」などに置き換えることで、自身の主張に対する責任をしっかりと負うことに繋がり、説得力も増すでしょう。
注意事項を守る!
「そうは言っても、文章を書くことが苦手だから難しいよ~」と思う方もいるでしょう。
そこで、次章で記す〈注意事項〉を、それぞれ意識して守るようにしましょう!
主張を上手に伝える文章にはいくつかのポイントがありますので、文章を書く際にはこれらをチェック項目として活用することで、徐々に要点がつかめてくるでしょう。何を隠そう、こうして偉そうに語っている私も、学生時分の課題レポートや論文は苦手でしたが、得意な友人に何度も添削してもらうことで徐々にコツをつかんでいきました。
まずは苦手意識から、書くことを遠ざけるのではなく、書くたびに注意事項を一つひとつ確認する工程に慣れていくことで、コツをつかむ訓練をしましょう。
〈注意事項〉篇
〈目指すべきスタンス〉に徹しているか?
こちらは心がまえ篇と似た項目になりますが、毎回初心に立ち返ることを意識下に置けるよう、あえて注意事項の最初に記しました。
ずばり、文章の書き手が目指すべきスタンス(取り組む姿勢)とは、【客観的に、かつ小学生でもわかるように】です。
【客観的に】とは?
【客観的に】とは、主張そのものの主観性を捨てよ、ということではありません。自らの文章、ひいては文字の一つひとつを媒介することで、主張そのものが別の捉えられ方をしてしまわないか、という〈危機感〉を常に持つべし、ということです。
そのためにも、すべての文章が客観的であるかどうか、常に自問しながら書き進めるスタンスが大切になります。
【小学生でもわかるように】とは?
【小学生でもわかるように】というのも、主張そのものの専門性(難度)を控えよ、ということではありません。余計な修飾語や比喩表現、四字熟語、諺(ことわざ)、専門用語、横文字(カタカナ語)、固有名詞、例示、難読語など、曲解されかねない文章表現はでき得る限り省くべし、という意味です。
こちらには重要なポイントがたくさん詰まっているため、それぞれ個別の注意事項として後述していきます。
〈修飾語〉は取り扱い注意!
修飾語とは文字通り、文章を飾るための語なので、ここは大胆に〈主張を100%伝えるためには必ずしも必要ではない語〉と考えましょう。
イメージとしては、主語+述語が〈骨格〉とするならば、修飾語は体を動かすために必要な〈筋肉〉でもある一方、動きを鈍らせる〈贅肉〉にもなり得る、という感覚です。
贅肉である理由を、次の例文で解説します。
(例文)どうしようもない山田が椅子の上に立っている。
(文節)①どうしようもない ②山田が ③椅子の上に ④立っている
②が主語、④が述語、①③が修飾語なので、事実のみを伝えるのであれば「山田が立っている。」だけでも文章は成り立ちます。
しかし、主語や述語をより詳しく説明するものが修飾語なので、補足情報として付け足されたはずの①や③が、ときには蛇足にもなりかねない場合がある訳です。
特に注意すべきは〈主観的な修飾語〉です。今回の例文であれば、①がそれに当たるでしょう。〈どうしようもない〉かどうかは、この文章の書き手の感性によるため、主観的と言えます。
一方、③は客観的な事実に基づいた修飾語と言えます。椅子という物体がその場に見えている以上、これは書き手の感性ではなく、事実だからです。ちなみに、書き手が幻覚を見ていたり、椅子だと思い込んでいる机だったり、そもそもこの文章が嘘であれば、話は別です。
ぜひ、ご自身の文章にある修飾語をすべて洗い出し、主張を読み取りにくくする〈贅肉〉になっていないか、見直してください。「これは余計だな」「これは主観的だな」という表現を削ぎ落とすことで、書き手の主張がより鮮明になり、ひいては説得力も増すでしょう。
〈比喩表現・四字熟語・諺〉はなくても良い!
〈比喩表現〉〈四字熟語〉〈諺〉にも注意を払いましょう。
結論、これらも修飾語同様、〈主張を100%伝えるためには必ずしも必要ではないもの〉です。無理に用いる必要はないですし、余計な使われ方であると判断したらガンガン削ぎ落としましょう。
〈専門用語・横文字・固有名詞〉は誰も知らない!
〈専門用語〉や〈横文字〉や〈固有名詞〉こそ、取り扱いには十分注意してください。
ここでいう横文字とは、世間一般に広く浸透しているとは言い難く、ビジネスなどの限定的なシーンで用いられるカタカナ語を指します。定義が曖昧で恐縮ですが、俗に〈ビジネス横文字〉などと呼ばれる言葉です。「アグリー」「イシュー」「シーピーエー(CPA)」など、例は無数にあります。
また、固有名詞もそれぞれ認知度が異なるため、具体的に「ここまでは大丈夫」と定義することは難しいです。
専門用語や横文字、そして固有名詞は、説明なしに使うことは〈大変危険〉です。自分が慣れているものだと、つい当然のように使ってしまいがちですが、上記の通り、人によって知っているかどうかに差があるからです。
これらにおいても、必ず「自分の文章には含まれていないか?」と確認しながら進めましょう。もし含まれていたならば、より平易な言葉に置き換えるか、その言葉を説明する一文を付け加えるようにしましょう。
ここで、「固有名詞はどのレベルまで説明してあげるべきか?」という疑問が生じますが、そこは【小学生でもわかるように】という原点に立ち返ると良いでしょう。
〈例示〉は的確に!
〈例示〉には〈読み手の理解を促す〉ことや〈読み手の印象に残りやすくなる〉というメリットもあります。
いま、あなたが読んでいるこの記事にも、例示はたくさん出てきました。
「たとえば」から始まる直接的な例示は、その前で説明した文章を、よりイメージしやすくするための手助けになります。また、ライティング術の紹介という趣旨からはイメージのかけ離れた「ピザ屋」の例示を用いたことで、この記事をより印象的にすることができます。
しかし、こちらも適切な用法を守らないと、ただただ分かりにくくなるばかりです。そうはならないためにも、まずは例示を用いるべきタイミングを見極めましょう。
例示を用いるタイミングとは、〈文章の抽象度が高く、そのままだと理解しにくいと思われるとき〉です。つまり、抽象的な文章を、より具体的な文章で説明し直す点に例示の強みがあります。
「その例えをしたことで、元の文章がわかりやすくなっているか?」「より具体的になっているか?」といった観点でチェックしてみましょう。
難読語はやめよう!
難読語を使うのもやめましょう。あえて難しい言葉を用いるという発想は捨てましょう。
万が一、「いま、どうしても使わなければならない」という場面があった場合、括弧書きで読み仮名をふりましょう。
類語や対義語は逐一調べる!
文章を書くとき、次のようなことを思った経験はありませんか?
- この一文にこの単語を使ってしまうと、少しだけ言いたいこととずれちゃう
- この一文にぴったりな単語があるはずなのに、思い出せない(頭に浮かんでこない)
- むしろ、こんな意味の単語さえあれば、この一文で言いたいことが伝わるのに!
これらは私が文章を書いているとき、度々たどり着く心境です。
昨今は電子機器の発達によって老若男女問わず語彙力の低下が叫ばれていますので、ここぞというときにぴったりな単語が思い浮かばないことも、よくあることでしょう。
そんなときには、やはり文明の利器に頼るべきでしょう!
『●●(調べたい単語) 類語』などでGoogle検索をすると、似た意味の単語がたくさんヒットします。また、対義語であれば『●●(調べたい単語) 対義語』で調べるといった要領です。
類語や対義語を調べる癖が付くと、それまで知らなかった言葉でさえ、「この単語で検索すれば、類語として出てくるだろう」という予測が立てられるようになります。そして、何より語彙力も鍛えられます。
そろそろ忘れる頃かもしれないので、ここで改めて〈我々が目指すべきスタンス〉をお伝えすると、【客観的に、かつ小学生でもわかるように】でした。
常に「今ある単語よりも、もっと文章がわかりやすくなる単語はないか?」といった〈探究心〉を持ち続けてください。それが文章で主張を100%伝えるためのスタンスです。
最後に
印刷必至!チェックリスト
最後に、ここまでご紹介してきたポイントをチェックリストとしておまとめしました。
これから文章で何かを主張したいという方は、こちらのリスト部分を印刷していただき、辞書などと一緒にお手元に置いていただけると良いでしょう。
〈心がまえ〉篇 | |
□ | 主張したいことがある(大前提①) |
□ | 文章は減点方式であることを理解している(大前提②) |
□ | 「〜と思う」は封印する |
□ | 次の注意事項を必ず守る |
〈注意事項〉篇 | |
□ | 目指すべきスタンスに徹している(危機感を持てている) |
□ | 贅肉となっている修飾語はひとつもない |
□ | 比喩表現・四字熟語・諺はない(余計な使い方をしていない) |
□ | 専門用語・横文字・固有名詞はきちんと説明できている |
□ | 例示は的確に使えている(具体化できている) |
□ | 難読後を使っていない(振り仮名がある) |
□ | 類語・対義語は常に調べながら文章に反映できている |
この記事を書いた人
旅田 康貴ディレクター / デザイナー / イラストレーター
デザインが一番苦手なデザイナーを目指しています。最近、名字が変わりました。