旅田です。
突然ですが、ここでクイズです。
「日本語を使う人なら誰でも鍛える必要があるにもかかわらず、意外とサボりがちな力ってなーんだ?」
正解は……【語彙力】です!
日本語にはたくさんの語彙があるので、そのすべてを把握するなんてほとんど不可能かもしれません。
しかし訓練を積むことで、少しずつ様々な語彙を獲得することができるでしょう。
今回はそんな “語彙力” を鍛えるべく、テスト形式で40問にチャレンジしていただきます。
まずは仕事やプライベートでも生きる語彙の増やし方、そのメリットなどをご紹介することで、モチベーションを上げていただけたらと思います。
語彙力とは
そもそも語彙についての説明は、次の通りです。
語彙(ごい)とは、ある人やある国が持っている単語の総体のことをいう。日本語の語彙といえば、日本語の単語の総数のことを指し、Aさんの語彙といえば、Aさんの知っている単語の数のことを表す。
このことから、知っている単語の総体が多ければ多いほど “語彙力” が高く、少なければ少ないほど “語彙力” が低いと見なすことができる、一種の力が語彙力なんですね。
たくさんの語彙を知り、会話の中でさらっと口にすることができる人は、なんとなくカッコいいですよね。
それはきっと、その人が語彙力という力を有しているからではないでしょうか。
語彙力を鍛えるメリット
正確な情報伝達ができる
例えば「だんだんと増えていく」と言う場合と「指数関数的に増えていく」と言う場合とでは、それぞれの増え方に明らかな違いを想像できるでしょう。
「だんだん(段々)」ならば、文字通り階段を登っていくかのごとく時間の経過と正比例した増え方がイメージできます。
一方、「指数関数的」ならば、ある時を境に急増する増え方をイメージすることができます。
このように、語彙力があると自分が伝えたいイメージをより正確に伝えることができます。
言葉を選べる
ひと昔前、カタカナ語(主にビジネス用語)を揶揄する風潮ってありましたよね?
「アグリー」と言うと、「いや素直に『同意』っていえばいいじゃん」といった類のものです。
こちら、突っ込みたくなる気持ちもよくわかります。
しかし、私はカタカナ語を多用しようが(しまいが)まったく問題ないと考えています。
なぜならば、それらが同じ意味を指す別の単語だとして、別の単語を用いた時点で、その言葉に宿る意図(≒相手に伝えようとする意思)が異なるからです。
よりポップな表現でいえば “ニュアンスが異なるから” です。
試しに「agree」を例に日本語訳を調べてみたところ、「同意」や「賛成」のほか、「応じる」「一致する」「仲よくやっていく」などといった意味があるそうです。
つまり「アグリー」には、同じ「同意」でも互いの意見がほぼ完全に一致しており、ともすると親しみの念すら湧いている状態という含み持たせることができるのです。
もちろん「アグリー」と発言したとて、親しみのニュアンスをも相手に伝えられるかといえば、それは相手の語彙力にもよるため、わかりかねるでしょう。
ただ、こうしたニュアンス込みで言葉を選べる時点で、意思疎通における自由度が広がるのです。
失礼を回避できる
先日、あるお客さまと打ち合わせをした際に「釈迦に説法かとは存じますが」というフレーズを挟んだところ、そのお客さまはすかさず「いえいえ、滅相もないです」と応答されていました。
釈迦に説法、つまりお客さまが既に熟知されているであろう分野についての話を展開しようとしたところで「いえいえ、私は知り尽くしてなどいませんよ」とご謙遜されたわけですよね。
こうしたやり取りは半ば反射的に行われるものですが、そもそも「釈迦に説法」という言葉の知識がなければ成り立ちません。
どんな相手とも “ツーといえばカー” (死語でしょうか?)の関係を築けるよう、語彙力は日々鍛錬しておく必要があるでしょう。
知的な印象を与えられる
こちらは定性的なメリットなので人によるかと思いますが、いつも適切な言葉を選んで話せている人や正しい謙遜の言葉を使えている人は、きっと知的に見えるのではないでしょうか?
相手に与える印象は言葉の端々から滲み出るものなので、対人関係がある以上、ぜひ生涯を通して鍛えていきたい力ですよね。
語彙力の鍛え方
ここからは語彙力の鍛え方についてご紹介します。
OJT
OJTはオン・ザ・ジョブ・トレーニング(On-the-Job Training)の略で、実務を通して行う職業教育の一種を指します。
これは新人が業務を覚えるために有効な手段ですが、語彙力の鍛錬にも高い効果を発揮します。
実際に職場で交わされている会話やお客さまとのやり取りなど、現場で使われている生の語彙たちとたくさん触れ合えるからです。
実際、私もあるお客さまが使っていたフレーズが便利だと感じ、その日のうちにお会いした別のお客さまに対してそのまま使ってみたことがあります。
こうして様々な語彙を耳で聴き、口で復習できる環境こそが、単語の総体を拡大するための近道と言えるでしょう。
語彙力が高い人との会話
OJTは、言うなれば様々な方との会話を通して確かな語彙を獲得していく方針でした。
それに対し、そもそも一部の語彙力が高い人との会話に集中してみるのもおすすめです。
語彙力は人生の経験値と言っても過言ではなく、私の経験上「この方は豊かな語彙をお持ちだな」と思った方は大抵が人生の大先輩でした。
こうした方のお話には人生経験に裏打ちされた確かな語彙力が見え隠れするので、 “語彙力を鍛えよう” と思って臨むというよりは、会話そのものを楽しむような心持ちでいると、自然と語彙力がアップしていくでしょう。
語彙力に関する本を読む
いつからか、街の本屋にふらっと足を運んでみると、その一角には日本語や語彙力についての書籍がずらっと並ぶようになった気がしています。
昨今、LINEなどのチャットツールで気軽にコミュニケーションが取れるようになった分、対面での会話に苦手意識を持つ人が増えたからなのかな、と邪推している今日この頃です。
兎にも角にも、語彙力を高めるために必要な教材は巷にあふれています。
まずは実際に手に取り、そのノウハウを得ることからスタートするのもよいかもしれません。
ちなみに、私もすべて読了したわけではないものの、齋藤孝さんの著書は名著が多い印象です。オススメ!
(齋藤孝 著『大人の語彙力ノート』)
漫画やアニメの鑑賞
実はこれが大穴かもしれません。
漫画やアニメから得られる知識って、意外と多いですよね。
こと “サブカル” に類する作品群には、語彙力を(良くも悪くも)飛躍的に伸ばしてくれそうな文学的要素を多分に孕んだ濃厚さを肌で感じることが多いです。
何を隠そうこのあと登場する語彙リストにも、私が実際に漫画やアニメから得たものが散見しました。
具体的な作品は多過ぎてとても語り尽くせません。
が、ただ一人だけ紹介するとしたら、私は迷わず川原泉女史を推します!!!
漫画の域を超えた文学的作品に触れたい方にはぜひお勧めします。
(川原泉 著『中国の壺』)
ビジネスメールを書く
語彙力の向上は、会話だけでなく文章での意思疎通にも役立ちます。
メールなどの文章を作成するときはその場ですぐ調べることができるので、会話に比べて語彙で困ることは少ないイメージですが、そんなことはありません。
様々な語彙が頭の中にインプットされている人は、いちいち調べる時間も必要なければ、ある言い回しから別の言い回しに言い換えることも容易にできます。
つまり、語彙力を獲得することが文章能力の向上にもつながりますし、その逆に普段から文章で様々な語彙に触れている人は、会話で発せられる語彙も豊かになるでしょう。
ビジネスメールの書き方についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しているので、合わせてお読みいただくと良いでしょう。
語彙力テスト40問
ここからいよいよ語彙力をテストしていきましょう!
以下、様々な語彙を40種類ご用意しました。
見出しに語彙があり、そこから意味や解説をしていますので、ジブリクイズのときのようにうまく答えを隠しつつ、その語彙の知識をテストしてみてください。
なお今回のリストには単語だけでなく、よく使われる熟語や誤用されやすい2つの単語を併記するなどしています。
より実践的なものになるよう意識して選定したので、既知のものは復習用として、初見のものはこれを機にご自身の語彙リストに追加してみてください。
【注】リストの並びは五十音順です。
【注】語彙の表記は主に文面で用いられるものとし、副次的な表記を〔〕内に記載しています。主な表記が漢字であれば〔〕内には読み仮名を、その逆に主な表記が平仮名であれば〔〕内には漢字を記載しています。
瑕疵〔かし〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
一般的には不具合や欠陥などを意味します。
ビジネス(正確には法律上)では、本来あるべき機能・性能・要件が満たされていない状況を指します。
例えばあるウェブ制作会社が「緑色を基調としたホームページを作ってください。」と依頼されたにもかかわらず、思わず赤色の派手なホームページを納品した場合、それは瑕疵にあたります。
この場合、クライアントからの要件を満たしていないので、本来の色に戻すための修正対応は当然無償で行うべきですよね。これが「瑕疵対応」です。
【例文】「本件は瑕疵にあたります。」
感/観〔かん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
2つ目にしてイレギュラーな項目で恐縮ですが、「感」と「観」は意味が異なりますよ、というお話です。
例えば「直感」の意味は、推理や考察などによらず、感覚によって瞬時に物事を捉えることです。
対して「直観」の意味は、推理や考察などによらず、瞬時に物事の本質を捉えることです。
非常に難しいようですが、私なりに噛み砕いていえば、
- 「感」=感覚的
- 「観」=本質的
といった違いがあるようです。
なお「カチカン」という言葉も正しくは「価値観」であり、「価値感」は誤用だそうです。
【例文】「お互いの価値観を尊重する。」
勘案〔かんあん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
あれこれを考え合わせることです。
ビジネスシーンで「勘案して」が登場したら、「よく考えたうえで」と脳内変換しましょう。
【例文】「様々な意見を勘案する。」「諸事情を勘案して、」
鑑みる〔かんがみる〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
手本と照らし合わせて考えたり、他と比較して考えることです。
刑事ドラマで登場する鑑識の「鑑」の字は、なるほどこれとルーツが一緒のようですね。
【例文】「先例に鑑みて対処します。」
忌憚〔きたん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
忌み憚ることや遠慮することです。
ビジネスシーンでの使用は後者がほとんどで、「忌憚なく」と言われたら「遠慮せずに」と解釈しましょう。
なお、同音異義語の「奇譚」は、面白くて不思議( “奇” 妙)な話のことです。
【例文】「どうぞ忌憚のないご意見を。」
詭弁〔きべん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
道理に合わない、言いくるめの議論のことです。
Wikipediaにも「主に説得を目的として」とある通り、大抵は理論が破綻した状態で説明をし続けている人が陥りがちですよね。
ノーロジックでフィニッシュです。
【例文】「そんなの詭弁だ!」
僥倖〔ぎょうこう〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
偶然に得る幸せのことです。
これは「ざわ…ざわ…」で有名な『賭博黙示録カイジ』好きな友人の口癖だったので覚えました。笑
余談ですが、私のここまでの人生におけるビジネスの場でこの言葉は一度も聞いたことはないのですが、もしも使っている方がいたら「あっ、この人カイジ好きかも…」と胸中でざわざわすると思います。
語彙力を鍛えることでこうした周辺知識も獲得できるチャンスが生まれるので、語彙力はビジネスシーン一辺倒で鍛えるよりは、興味本意を大切に幅広く強化していくのもよいでしょう。
【例文】「僥倖っ…! なんという僥倖…!」
矜恃〔きょうじ〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
自分の能力を信じていだく誇りやプライドのことです。
超・主観的な意見ですが、ラノベやオタク界隈では有名な気がしています。
プライドと思って使えばまず間違いないのですが、より知的なイメージを相手に植え付けたい欲求に駆られた際にはオススメな単語です。
つまりは積極的に使わなくてよい語彙ですが、知っておく分には困ることはないでしょう。
【例文】「これが私の矜恃です。」
教示〔きょうじ〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
教え示すことです。
よく「ご教示ください」という使い方をするかと思いますが、ほぼ同じ意味で「ご教授ください」という表記もあります。
「教授」となる場合、特に学問や技芸といった専門的な知識・スキルを教えるというニュアンスがあるので、ビジネスシーンでは「教示」を使うのが無難です。
大学教授も専門的な学問を教える立場ですから、そういった関連で覚えるといいですね。
【例文】「今後の改善点につきまして、ご教示のほど何卒よろしくお願い申し上げます。」
ご査収ください〔-さしゅう-〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
熟語での掲載となります。
「内容をよく確認してお受け取り下さい。」といった意味になりますので、丁寧さを出しつつも相手方に確認義務を負ってもらうため、非常に便利な表現です。
私は数年前にTwitter界隈で本表現がバズっていたので覚えました。笑
【例文】「こちら月次レポートとなります。ご査収ください。」
ざっくばらん
▼▼▼[解説]▼▼▼
遠慮がなく、率直なことです。
恐らく「ざっくり」と似ていることから、概要だけをおおざっぱに説明する際などに使用されている印象があります。が、これは誤用です。
ビジネスの場において、お客さまから「ざっくばらんにお打ち合わせしましょう。」と言われたら、それは「畏まり過ぎず、本音ベースで意見交換しましょう。」と言われているようなものです。
【例文】「ざっくばらんに言わせていただきます。」「ざっくばらんな人柄ですね。」
刷新〔さっしん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
よくない状態を除き去り、まったく新しくすることです。
類語の「一新」は単に新しくすることなので、マイナスからプラスにするというニュアンスを含みたい場合に重宝します。
【例文】「組織を刷新する。」
参画〔さんかく〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
計画に加わることです。
同音異義語の「参加」は単に加わることですが、「画」の字があるように何かの計画に加わるイメージとなります。
【例文】「重要なプロジェクトに参画する。」
散見〔さんけん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
あちこちに散らばっているものを見かけることです。
この言葉は主語が人ではなくモノになるため、「散見する」=「(モノが)見かけられる」という受身の意味がはじめから含まれています。
よって、私も使いがちだった「散見される」という使い方は “受身の重複” となるため、本来はNGです。
「散見される」は、誤用が多発し過ぎてOKになったらしいです。
【例文】「修正ミスが散見する。」
指数関数的〔しすうかんすうてき〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
指数関数のように、ある値が大きくなるに連れて程度や量が飛躍的に増すような状態のことです。
ちなみに指数関数は高校数学Ⅱ分野に含まれているので、卒業されている方は実家から教科書を引っ張り出してグラフの形を確認してみましょう。
【例文】「迷惑メールが指数関数的に増えています。」
恣意的〔しいてき〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
主観的で自分勝手なさまのことです。
論理的な必然性がない状態に対して使うので、ある目的のためにあえて自分の思うがままに振舞う場合は「意図的」を用いるのが正しいです。
【例文】「部長の恣意的な議論の進め方には問題がある。」
敷居が高い〔しきい-たか-〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
でました、私的 “誤用率ナンバーワン” の語彙です。笑
本来は不義理や面目のないことがあって(その人の家に)行きにくいことを指すのですが、多くの方がスペックや格調が高過ぎるなどの理由から行きにくいことだと勘違いしている印象です。
恐らく「高い」繋がりで「ハードルが高い」と混同しやすいのかもしれませんね。
【例文】「以前、損害を与えてしまったA社さんのオフィスは敷居が高いな。」
失念〔しつねん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
うっかり忘れることです。
ビジネスマンとして「つい」「うっかり」というなんのロジックもない理由で約束事を忘れることは、本来あってはならないことです。
そんな “とんでもないやらかし” を、何となく軽い感じかつ丁寧なニュアンスで伝えられる魔法の言葉が「大変申し訳ござませんでした。こちら失念しておりました。」です。潔く伝えましょう。
【例文】「大変申し訳ござませんでした。こちら失念しておりました。」
釈迦に説法〔しゃか-せっぽう〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
既に知り尽くしている人に対し、そのことを説く愚かさのたとえです。
『失礼を回避できる』のパートでも紹介していますが、もし相手方がこれを使ってきたら「滅相もございません。」などと返答することで謙遜のニュアンスを伝えることができます。
【例文】「釈迦に説法かと存じますが、SEOの概要についてご説明させていただきます。」
枝葉〔しよう〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
枝と葉のこと、転じて主要でない事柄のことです。
四字熟語「枝葉末節」とほぼ同じ語彙になりますが、経験上、こちらをわざわざ使う方はほぼいません。
しかし「エダハ」と訓読みされる方は一定数いるイメージなので、会話においては、この音読み・訓読みのような読み方の違いにこそ注意しましょう。
【例文】「その施策は枝葉です。」
証左〔しょうさ〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
証拠や証人のことです。
「証拠」だと何やら事件の臭いがするからか、ビジネスシーンだと「証左」というのが多様されている所感です。
【例文】「この事実こそが何よりの証左である。」
所感〔しょかん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
心に感じたこと、感想のことです。
「感想」というと、思いつくがままの感情を述べたりなど、定性的な印象があります。
一方、心に感じたことを具体的に言語化して説明するビジネスシーンにおいては、その定量的なニュアンスから「所感」を用いる場合が多いです。
【例文】「データ分析した所感を述べたいと思います。」
所見〔しょけん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
見たところという意味に加え、考えているところや意見などの意味があります。
同音異義語の「所感」とは意味も似ているため混同しやすいですが、「所感」は “感じたこと” について、「所見」は “見たこと” について、それぞれ意見する場合などで使い分けられます。
【例文】「私の所見では、あれば虎ではなくチーターです。」
是/否〔ぜ/ひ〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
是=よいこと、否=悪いこと、です。
「是とする。」のような使い方があった場合、それは賛同していると思ってください。
「否とする。」とは、あまり言いません。
【例文】「こちらのプランを是とする。」
総括〔そうかつ〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
個々のものをひとつにまとめることや、全体を見渡してまとめをすることを意味します。
ここまで取り組みについての報告や、その成果と反省点を評価することもニュアンスとして含まれるので、これもビジネスシーンで使われがちです。
【例文】「上半期の総括を行う。」
総論/各論〔そうろん/かくろん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
「総論」は、ある内容を全体的に捉えた意見や議論です。
「各論」は、全体をいくつかの項目に分けたとき、そのひとつひとつについての意見や論議です。
ロジカルな説明を行うとき、まず全体像を説明し、それから各項目の説明に展開する場合が多いですよね。
そうしたときにずばり使えるので、非常に便利な語彙だと思います。
【例文】「それは各論なので、まずは総論からご説明させてください。」
齟齬〔そご〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
意見や事柄が食い違って合わないことです。
私は某情報統合思念体のセリフで覚えました。わかる人にだけ伝わば幸いです。
【例文】「情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。」
代替〔だいたい〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
他のものでかえることです。
「ダイガエ」と誤読される率が高いこちらの単語ですが、あまりに誤読されるため、いつしかこちらも正式にOKとなったらしいです。
【例文】「代替案をお出しします。」
中庸〔ちゅうよう〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
偏ることなく常に変わらないこと、過不足がなく調和がとれていることです。
元は儒教からきている言葉で、ちょうどよいことはいいことだ、的なときに使われがちです。
【例文】「中庸であり続けたい。」
つまびらか〔詳らか・審らか〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
詳しくて、事細かなことです。
全然覚えなくてよい話ですが、私ははじめ「つまびらか」→「びらか」→「ひらく」といったイメージで、あけっぴろげに情報開示するから、と勘違いをしていました。
そんな意味はまったくないので、上記はスルーしてください。笑
【例文】「つまびらかにする。」
轍を踏む〔てつ-ふ-〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
先人がおかした失敗を繰り返すことです。
轍とは車輪によって道路にできた溝のことですから、溝を失敗に例えたうえで、後続車がその溝を同じようになぞってしまうことから発生しているようです。
サザンオールスターズの『希望の轍(わだち)』という曲はあまりに有名ですが、こちらは溝をポジティブなものと捉えた歌なのかもしれませんね。
【例文】「俺は同じ轍を踏むような馬鹿な真似はしないぞ!」
定量的/定性的〔ていりょうてき/ていせいてき〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
「定量的」は、状況や状態を数値化して表すことです。
一方の「定性的」は、誰が見ても同じ認識や評価ができない事象を抽象的なものに着目して表すことです。
売上目標で例えてみると、「昨年対比120%達成」というのが定量的な目標、「よりよい状態にする」というのが定性的な目標です。
目標設定の例で両者を見分けるもうひとつの手段としては、それぞれ “具体的にどうなったら目標達成といえるか?” が明確に答えられるかどうかになります。
「昨年対比120%達成」であれば、今年の売り上げが昨年の1.2倍以上であれば目標達成です。
「よりよい状態にする」では、何をもって「よい」と判断するかが曖昧なため、そもそも目標が達成されているのかどうかが判断できません。
営利企業のビジネスにおいては利益をつくることが重要となってくるため、目標の達成状況すら判断できない定性的な活動はすべきではありませんよね。
【例文】「定量的な目標を設ける。」
鉄面皮〔てつめんぴ〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
厚顔無恥なことです。
面(つら)の皮がまるで鉄でできているように厚いこと、つまりは非常に恥知らずだということです。
【例文】「鉄面皮な人。」
手前味噌〔てまえみそ〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
自分で自分を褒めること、つまり自慢のことです。
元々、味噌は自家製が当たり前だったそうですが、自分(=手前)がつくった味噌を互いに自慢し合ったことから発生した言葉だそうです。
端的に「自慢」といってしまうとやや憚られる語彙ですが、「手前味噌で恐縮ですが」などのような謙遜した表現と合わせて用いることで、遠回しに “自分のことを褒めるようで恐縮ですが” といった意味になるため、非常に便利です。
お客さんの課題を解決するとき、例えば「弊社が独自開発したサービスAが適しています!」と言うよりは「手前味噌ですがサービスAが適しています。」の方が、だいぶ控えめな印象になりますよね?
【例文】「手前味噌ながら今回のプロジェクトは私がリーダーとなり進めております。」
当該〔とうがい〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
それに当たる、その、それを受け持つといった意味です。
もう少し詳しく説明すると、今まさに話題となっているものや、それと直接に関係する事項などを指し示すときに使われます。
なお、何となく似ている「該当(がいとう)」はある条件に当てはまることを意味するので、まったく異なる単語です。
【例文】「当該の案件は私が担当しています。」
俯瞰〔ふかん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
高い所から見おろすことです。
転じて、広い視野で大局的に物事を捉えるときなどにも使われがちで、ビジネスシーンでも頻出する語彙と言えるでしょう。
【例文】「マネージャーたるもの組織を俯瞰して見るべきだ。」
ミクロ/マクロ
▼▼▼[解説]▼▼▼
「ミクロ」は微小なものや微視的といった意味、「マクロ」は巨大なものや巨視的といった意味です。
カメラ関連でも目にすることのある単語かと思いますが、ミクロレンズといえば非常に小さいものを接写するためのレンズなので、やはり同じ意味ということがわかりますね。
こちらも「俯瞰」同様、どういった視点で物事をとらえるか考える際に使えるので、ビジネスシーンでよく登場します。
物事は多角的にとらえなければ正解に近づけないので、どんなときでも複数の目を持っていたいものですね。
【例文】「マクロな視点で長期計画を、ミクロな視点で短期計画を立てよう。」
やぶさかではない〔吝かではない〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
「やぶさか(吝か)」が気の進まない状態を指すので、その否定形である「やぶさかではない」は肯定的な意思を表します。
日本語には二重否定といった概念が(今も昔も)ありますが、わざわざ否定に否定を重ねる周りくどさにより、むしろ強い肯定を表します。(今回の場合、より正確には『緩叙法(かんじょほう)』と呼ぶそうです。)
よって、「やぶさかではない」は喜んでやりたいといったニュアンスになります。
【例文】「そちらの案件、対応するにやぶさかではございません。」
理論/論理〔りろん/ろんり〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
こちらは、どちらかといえばしっかり使い分けができていますか? といった意味合いでリスト入りしました。
「理論」は、普遍的で体系的な説明・概念・知識のことです。英語は「theory(セオリー)」。
「論理」は、ある条件から正しい結論に至るまでの考え方のことです。英語は「logic(ロジック)」。
これでもだいぶ手短にしてみたのですが、ちょっとよくわからないので、例文を多めに用意してみました。
【例文】「超弦理論は有名です。」「理論上、タイムトラベルは実現可能です。」「考え方が論理的ですね。」
老婆心〔ろうばしん〕
▼▼▼[解説]▼▼▼
必要以上の親切心や、不必要なまでに世話を焼きたがる気持ちのことです。
こちら、何かの語彙に似てますよね……?
そう、「釈迦に説法」ですよね!
「色々とお詳しい貴方さまに対して詳しく説明し過ぎているかと存じますが、」という長めの一文を、「老婆心ながら、」のひと言で済ませることができます。
【例文】「老婆心ながら補足させていただきます。」
最後に
日々の学習が大事!
まず今回の記事についてですが、たった40語とはいえ、ひとつひとつの語彙について調べながら紹介してみると想像を絶する大変さでした……!笑
すべて知ったつもりでいたのですが、改めて知った意味やニュアンスも少なからずありました。
今回の私のように、普段から言葉では使っていても、いざ正しく説明しようとすると難しいものそれが日本語なのだと思います。
知識としての語彙を吸収し、それを自分の言葉で活用することが語彙力強化のための基本となります。
こうした学習を毎日繰り返すことで、日本人として恥ずかしくない語彙力を身に付けていきましょう!
この記事を書いた人
旅田 康貴ディレクター / デザイナー / イラストレーター
デザインが一番苦手なデザイナーを目指しています。最近、名字が変わりました。